昨日は記事通りに本当に寝て、しかもよく眠れた。それでも起きるのはつらかったが、おかげで今でも割合楽だ。かゆみすらあまり出てこなくなった。よく寝て、食べて、活動すると、ひとはだいたい元気なものだ。しかし、インターフェロンとリバビリンの副作用が、私の場合それを邪魔してくる。今日もこんなによく眠れて元気かはちょっとよくわからない。
前のインターフェロン投与で入院したときに驚いたのは、平日の昼、患者さんの多くが病棟のテレビで『おもいッきりテレビ』を観ていることだった。『あるある大事典』は消灯後の放映なので、よくわからなかったが、たぶん観ていたことだろう。患者さんから「『あるある』でやってた」という言葉を聞いたことがある。両方ともいわゆる健康番組、というか疑似科学番組だが、今でもこの番組は非常に人気がある。入院していたのは6年前だから、今どき大変な長寿番組だ。ある食品がこれらの番組で紹介されると、翌日のスーパーの売り上げが恐ろしく違うらしい。でも、あれだけ長くやってるんだから、スーパーで売っていそうな生鮮食材などは、紹介されつくされたんではないだろうか。結局全部食べるのが一番いいということになったりして。
お仲間リンクにもあるMelitで代表人の加藤医師が「民間療法、健康補助食品やサプリメントの使用について」で、医師の立場から明確に答えていらっしゃるので、特に付け加える必要もないのだが、患者の立場からといってはおそれおおいが、こうしたものについて書いてみようと思う。
私は田舎百姓の家の出なので、民間療法や漢方などは身近だった。子どもの頃に、先天性の病気のせいで内出血が起きたときは、マムシ酒を決まって湿布していた。マムシ酒の入った一升瓶の底には、マムシがとぐろを巻いていて、そんな瓶が4、5本はあった。くすりといえば置き薬。丈夫になるようにと救命丸はよく飲んだし、腹が悪くなれば三光丸や熊の胆、歯が痛かったり熱が出ればケロリン(これは新薬だが)を飲んでいた。やけどには味噌やキュウリ。病気持ちの私を案じて、母が祈祷に連れて行ったり、新聞に出ていたとニンジン汁を飲ませたこともある。その母は婦人科系が悪かったのか、私が小さいころ、實母散を煎じて飲んでいた。
私の妻もなぜか同じようなもので、腹がおかしくなると、おばあちゃんの作った梅肉エキスを、これがいちばん効くと言って、今でも飲んでいる。娘にも飲まそうとして嫌がられていた。新婚の時、風邪を引いたといって、首にネギを巻いて寝て、その悪臭で、隣で寝ていた私を大いに悩ませたこともある。
その他にも滋養強壮剤やらも含めて、大人になって試したものはいくつかある。思いつくまま挙げると、キヨーレオピン、大高酵素、バイオノーマライザー、ウコン、亜鉛、エビオスなどなど。だが、始めて数ヶ月もするとどれも飲まなくなった。私に効いたためしがないのだ。結局今は飽きてしまって何もしていない。食べ物も身体にいいとか悪いとかで選別せず、食べたいものを食べている。特にインターフェロンをやっている最中は、概して食が細くなるから、身体に良いものより、まず食えるものを食う方がいいに決まっている。母は何かというとあれは身体にいいとか言っているが、死んだ父は好きなものを飲み食いして、酒や煙草も好きなだけのんだ。私はやはり父のタイプのようだ。理屈はいらない、うまいものが一番だ。巷でよく飲まれるドリンク剤も、芝居をやっていたときに飲んで舞台に出ると、変なところに力が入るのか、必ず出血したので、それからは一切飲まない。
C型肝炎だと、専門医によれば、肝臓によいと思われているしじみやレバーは、鉄分が多いのでかえってよくないらしい。また、ウコンやアガリスクも免疫系をいじるので、悪化させるおそれがあるという。ウコンを健康食品で摂って、肝機能の数値が上がった肝炎患者が、病院に担ぎ込まれた例を医師から聞いた。しかし、だからといってそういう医師も、アガリスクは別にしても、しじみ汁やレバニラやカレーライスを食べるなとは言わないだろう。肝臓に影響が出るほど食べようと思えば、食生活自体がおかしくなってしまう。
吉村昭の小説が好きで、最近よく読むが、『深海の使者』で旧日本軍の潜水艦の乗組員の野菜不足を補うために、エビオスが使われていたことを知り、興味深かった。今ではセックスの方で有名だ。亜鉛もそうで、2ちゃんねるなどでチ○ポビンビン、精液ドバドバ、スパシーボ!!とか書いてあって、面白そうなので試してみたが、どうということはなかった。
健康食品や代替療法に関する本もよく出ていて、地方紙の広告をにぎわせている。しかし、そういうものは決まって患者数の多い病気になぜか効くもので、先天性無フィブリノゲン血症のような患者数の少ない、しかも先天性の病気には効かないことになっている。「先天性の病気まで治った!」とか書けばものすごい宣伝になると思うが、さすがにそんなものはない。答えは簡単で、そんな治療法では治らないし、カネにもならないからだ。難治性で患者数が多ければ、それだけ飛びつくひとも多く、カネになるのだ。C型肝炎患者などよいカモだ。
健康食品やサプリメントには、「最高の品質!」とか「○○を何%配合!」とかいろいろ宣伝文句が並ぶが、あんなものは米屋の「魚沼産コシヒカリ」以下の信憑性しかない。100%魚沼産しかそれが表示できないことにすると、米屋の魚沼産コシヒカリはたぶん10分の1くらいになってしまうのではないか。みんな混ぜ米をして売っているのだ。何の表示規制もない健康食品だのサプリだのを信用する方が馬鹿だ。ごく個人的にイワシの頭をありがたがるのは結構だが。
いろいろ書いたが、こうしたものがブームになる背景には、自分の健康や今かかっている病気に対して、漠然とした不安があり、しかも苦痛を伴わずに健康になりたいという意識があるのだろう。もちろん現在の医療に対する不満もある。そしてこれらが、民間療法などが案外最近まで(農村部などでは特に)ポピュラーだった日本の状況と結びついているのではなかろうか。
C型肝炎患者さんにもよくいそうだが、新しい治療法とか新薬の研究情報について、医師以上に血眼になって探している患者さんも、結局根は一緒だと思う。実はこんなことをいままで長々書いたのも、インターフェロンとスタチン類の併用療法を聞きつけて、早速検索をかけてきたひとが何人かいるからだ。以前にメバロチンのことをほんの少し書いたので、このBlogが検索にひっかかったのだ。確かにC型肝炎のインターフェロンによる治療は、短期間で長足の進歩を遂げている。しかし、悪いことは言わないから、こうしたものが実用化されるまでには、いかに有りものをひっつけただけでも、10年かそれ以上かかるぐらいに考えた方がよい。まだ細胞実験レベルの話ですぞ。精神衛生上もその方が楽だ。血友病の場合でも、10年くらい前から遺伝子治療の研究が行われていて、あらぬ希望を患者さんに与え続けているが、実用化のめどなど全く立っていないのだ。割と近い将来に使えそうなのは、バイエルが開発しているペグ第VIII因子製剤(こっちもペグなんですよ)あたりだけのようだ。
もうひとつ心配なのは、こうした方向に走る行動に、医療費の自己負担額の増加などが反映されていないかということだ。もし、それがこうした妖しげな方向へ人々を駆り立て、医療機関の受診を妨げているのであれば、医療政策そのものが犯罪的行為を犯しているといっても言いすぎではない。
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